I Found You / Nilda's Story
- 杉山慧
- 2019年1月8日
- 読了時間: 3分
benny blanco, Calvin Harris & Miguel - I Found You / Nilda's Story
ベニー・ブランコ、カルヴィン・ハリスにより2018年にリリースされた「I Foud You」にミゲルをヴォーカルに加えた新バージョンがリリースされた。本バージョンでは、これまでのダンスミュージックだったアレンジを大胆に変更、ストリングス入れサウンド面での浮き沈みを抑え、ミゲルの声に焦点を当てたアレンジとなっている。はじめ字幕は歌詞かと思いましたが、明らかなに違うので読んでいくと、なんとこのMVは、ホンジュラスからアメリカへ移民としてやってきたNildaという女性のドキュメンタリーになっているのです。
このMVはアメリカ自由人権協会、the Brooklyn Defenders Services、RAICES(日本語ではなんというか分かりませんが、Refugee and Immigrant Center for Education and Legal Servicesという非営利団体で、直訳すると教育と法務サービスのための難民/移民センターとなります。)の3つの団体による新しい移民援助基金While They Waitの活動を広めるために作られたそうです。
その活動とは、MVの最後にNildaには未だに足に監視用のモニターが付けらていたり、強制的に離ればなれにさせられた家族など、彼女のような移民が強いられている合法的な支援が受けられない現状を打開するための支援やサービスなどの運動。さらに国外追放に直面している移民は弁護士もつけることができず強制送還される場合もしばしばあるそうで、そんな彼らの権利を要求運動もしているそうです。
そして、この問題は対岸の火事ではなく、この移民の方々に対する人権を無視した対応は日本でも行われているなと思いました。それは技能実習制度や4月から施行予定の入管法改正案など、最近だけの話ではなくこれまでの日本の移民政策は一貫して労働力の調整弁としてしか捉えてきていなかった歴史があるそうです。その歴史は荻上チキsession22 11/26のメインセッション「国会で議論されている今こそ知るべき入管法改正の歴史〜日本は外国人をどのような存在として捉えてきたのか〜」で分かりやすくまとめられています。ラジオクラウドで聴けるのでぜひご一聴を。
この「I Found You」の中で歌われている“あなたを見つけた”というこの歌詞には、Nildaがやっと自分の息子と再会できたこと、それだけでなく彼女のように人権を無視され生活を送る多くの人々がいることを社会の側が見つけ手を差し伸べようという意図があるのかなと思いました。そして、音楽がこういった活動を広めるツールとして大きく機能していることは、エンターテイメントのとても大事な側面の一つだと思います。音楽に政治を持ち込むなというスタンスの方もいるかもしれませんが、それは絶対的に無理なことではないでしょうか。なぜなら全ての発言は何かしらの立場に立って発言しているので、政治的でない発言など世の中にはないのですし。

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