Hasukey / Go Wrong
- 杉山慧
- 2021年3月22日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年3月23日
※このブログはボツ記事をアップしておりますので、論理的矛盾が孕んでおります。暴論部分には多少目をつむっていただき、筆者の練習にお付き合いいただければ幸いです。
自身の心情を天気をモチーフに表現した楽曲がある、それらをここではお天気ソングと呼んでおくことにする。ここで取り上げるシドニーを拠点に活動するソングライターHauskeyによる「Go Wrong」もその一つだ。この曲に影響を与えたと考えられる楽曲として3つの楽曲を取り上げて、本作を分析してみたい。
1曲目は、Travis「Why Does It Always Rain On Me」(1999)だ。Hauskey「Go Wrong」は歌詞で、”夏の午後のように輝きたいけど、ぼくはいつも手放しでは喜べない”など、天気を絡めながら自分の悲観的な心情風景を描写する様や、青空の下、彼の上だけに雲がかかったアートワークは、ぼくにはいつも雲がかかっていると歌うTravisの上記の楽曲を踏襲しているようだ。日差しを感じながら口ずさみたくなるメロディーも、上記で取り上げたTravisと共通する部分を感じさせるが、本作はより夏を思わせるというか日差しの強さと陽気な響きが強調されているように思う。
2曲目は、Jimmie Davis「You Are My Sunshine」(1939)だ。恋人を太陽に見立てて、曇り空の下でも君は私をハッピーにしてくれると歌う、この曲は、ジョニー・キャッシュにカバーされたり、ミシャ・カンプ監督作の映画『BOYS』(2014)でキャンプのシーンで使われたり、子ども向け番組にも使われており誰もが知っている定番のお天気ソングだ。現代のポップスにおけるキミは太陽系の元祖の一つと言えるだろう。Travis「Why Does It Always Rain On Me」は、キャンプで歌われるこの定番曲の世界観をモチーフにして作り替えたとも言えるだろう。Hauskey「Go Wrong」への影響という点では、はじめのバースだと思う。
Jimmie Davis「You Are My Sunshine」のはじめのバース
The other night dear,
as I lay sleeping I dreamed I held you in my arms
When I awoke, dear, I was mistaken And I hung my head and cried
Hauskey「Go Wrong」のはじめのバース
I wanna as bright like summer at noon
(But) I'm so used to being down that I don't trust good news
Holes in my sweater that I've worn through From fighting monsters with a feather
(If I'm ever on a high) I feel dizzy ‘cause I
完全に一致している訳ではないが、このバースは音で聴いていると同じような歌い回しが共通している所があり、これを元に雰囲気を踏襲していると言えるのではないだろうか。R&Bなどではよく見られる雰囲気サンプリングと言うやつ。
3曲目がStevie Wonder「You Are the Sunshine of My Life」(1972)だ。Jimmie Davis「You Are My Sunshine」がキミは太陽系のはしりだとすれば、Stevie Wonderのこの曲は、それをモチーフにした70年代版キミは太陽系ソングの定番と言える。Hauskey「Go Wrong」のベースライン、ホーン、ドラムなどを使ったグルーヴィーなサウンドは、この曲からの影響と考えられるのではないだろうか。そうしたサウンドをヒップホップ以降の感覚で編集したという点では、Anderson Paak的と言えるかもしれないが。
そんな本作の最大の魅力は、サビだろう。ここでの悲観的に考えてしまう自分を憂いつつも、そうすることで安心感を得ている内容の歌詞は、ホーンなどで彩られたグルーヴィーなサウンドに合わせて歌われることで彼の悲観的思考の癖を肯定しているように聴こえてくる。それは、悲観的になるにも太陽の下が良いよねという、能天気なのか悲観的なのか分からない本作の全体のトーンを緩める働きをしており”何だかなぁ”という絶妙な温度を醸し出している。この楽曲をこのように解釈すると、お天気ソングの連なりを楽しんで作ったのではないかなぁという姿が浮かび上がってくるようだ。
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